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遺留分減殺請求について
(ついでに相続・遺言の基礎知識を習得)
《「相続」・「遺言」・「遺留分減殺請求」について》
■相続とは
自然人の財産法上の地位を、その者の死後に法律及び死亡者の
最終意思の効果として、特定の者に承継させること。
相続には、法定相続と遺言による相続があります。
相続は死亡によって開始します(民法882条)
そして死亡した人を被相続人といい、被相続人の財産などを引き継ぐ人を
相続人といいます。
法定相続において相続人となりうるのは、配偶者(夫または妻)・
子(孫など)・直系尊属(親や祖父母など)・兄弟姉妹です。
ちなみに、入籍していない内縁関係の場合には相続人にはなれません。
(法定相続分について 民法900条)
子及び配偶者が相続人のとき 各2分の1
配偶者及び直系尊属が相続人のとき 前者が3分の2・後者が3分の1
配偶者及び兄弟姉妹が相続人のとき 前者が4分の3・後者が4分の1
被相続人の財産を相続するにあたって、相続人には
3通りの選択肢があります。
すなわち、単純承認・相続放棄・限定承認です。
単純承認とは、被相続人のすべての財産を相続することをいいます。
ここで、すべての財産とは、不動産や預貯金などのプラスの財産だけ
ではなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含みます。
この単純承認とは逆に、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も
すべて相続しないという意思を表示することを相続放棄といいます。
(民法938条)
「被相続人の財産がプラスとマイナスどちらが多いのか分からない。
もしマイナス財産の方が多いのであれば、相続したくない」というのが
人の情です。
ここで登場するのが、限定承認です(民法922条)。
これは、被相続人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する
というものです。
ただ、この限定承認は相続人全員がそろって行わなければなりません。
また、相続放棄・限定承認した場合は、自分の相続開始を知ったときから
3ヶ月以内に裁判所に届け出なければいけません。
この届け出がなければ単純承認したものと扱われます。
■遺言とは
一定の方式で示された個人の意思に、この者の死後、それに即した
法的効果を与えるものをいいます。
難しい表現を使いましたが、TVドラマなどで「遺言」について大体の
イメージはお持ちだと思います。
「遺言」にはそれぞれ方式の違う3種類のものがあります。
すなわち、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言です。
自筆証書遺言とは、遺言者がその全文・日付・氏名を自分で書き、
印を押す方式のものをいいます(民法968条)
一人でいつでも簡単に作成できますが、方式に不備があると無効になる
おそれがあるので、念の為専門家(当事務所)にチェックを依頼されること
をお勧め致します。
公正証書遺言とは、証人2人以上の立会いの下に、
遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、作成される方式のものをいいます
(民法969条)
この方式は、主に裁判官や検察官を退職した者からなる公証人によって
作成される公文書なので、安全確実です。
ただ、作成の手続きが少し面倒で、費用や手数料がかかってしまいます。
秘密証書遺言とは、公正証書遺言と同じく公証人によって作成される
もので、遺言の内容自体を誰にも知られることがないというものです。
(民法970条)
ただ、この方式の遺言は実際にはほとんど利用されていません。
「相続を争族にしないために遺言を作成しましょう」という
言葉を耳にされたことがあるかもしれません。
相続やそれに伴う問題は、TVドラマの中に出てくるような資産家にのみ
関係がある事柄ではありません。
人が亡くなるということが必然であるように、相続も人が亡くなることで
当然のようにやってきます。
「遺言を作成していれば争いにならずに済んだのに。。。」
これほどつらい後悔・失敗はありません。
なぜなら、人が亡くなっている以上、「やり直すことができない」し、
「失敗は誰にでもある、次回頑張ればよい」という
次元の問題でもないからです。
このように、遺言書を作成しておくことは生きているすべての人にとって
重要なことなのですが、中でも特に作成の必要性が高いケースを
ご紹介しておきますので参考にして下さい。
①子供がいない夫婦 ②相続人となりうる者同士の仲が悪い
③法律で定められた相続人には該当しないが、お世話に
なったので財産を与えたいと考えている人がいる
④籍の入っていない内縁の妻(夫)がいる
⑤法律で定められた相続人となる人が誰もいない
これらのケースがなぜ遺言書作成の必要性が高いのかという
個々の理由は割愛させて頂きますが、全体を通していえることは、
「遺言書に記載されたことは、法律で定められた相続よりも基本的に
優先されるから」ということです。
■ここまでのおさらいと「遺留分」について
「相続」のところで述べましたが、被相続人の財産は遺言書がなければ、
原則として法律に定められた割合で相続人に相続されることになります。
「自分が死んだ後、その財産の分配先などが法律で決められることは
耐えられない。自分の好きなように決めたい」
このような願いを叶えることができるのが「遺言」です。
遺言書を作成しておけば、原則として自分の財産を好きなように
処分することが可能です。
例えば、「私の全財産を愛人のI子に」という遺言を作成すればよいのです
ただ、このような遺言書が作成されて、その通りに実行されると困って
しまう人が出てきます。
それは、この遺言書を作成した人の妻と子供です。
「遺言」によって、「自分の財産を自由に処分したい」という願いが叶う
一方で、その「遺言」によって困ってしまう人が出てくる。
「この矛盾を調整して、困っている人になんとか手を差し伸べよう」という
趣旨から定められたのが「遺留分」という制度です。
■「遺留分」制度とは
相続にあたって、被相続人(死亡した人)の財産の一定部分は
相続人に保障されますよというものです。
では、誰に遺留分が認められるのか?(遺留分権利者)
遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人です。すなわち、配偶者・
子(孫など)・直系尊属(親や祖父母など)がこれにあたります。
では、遺留分の割合は?(民法1028条)
① 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
② ①以外の場合 被相続人の財産の2分の1
上記が全体の遺留分の割合となり、遺留分権利者が複数いる場合は、
この全体の遺留分の率にそれぞれの遺留分権利者の法定相続分の率
を乗じることによって個々の遺留分が決められます。
(例) 相続財産が2000万円 被相続人(夫)には配偶者(妻)と子供が
2人います。
そして、遺言に「全財産を愛人のI子に」と記載されていた場合
この場合、遺留分権利者は配偶者と2人の子供となります。
そして、遺留分権利者全体の遺留分は2000万円の2分の1の
1000万円です。
この1000万円をそれぞれの遺留分権利者の
法定相続分に従って分けます。
配偶者の法定相続分は2分の1なので1000万円×2分の1で500万円
子供の法定相続分も2分の1ですが、2人いるのでこれを頭数で割ります
1000万円×2分の1×2分の1=250万円
この例での遺留分は、配偶者が500万円
子供2人がそれぞれ250万円となります。
遺留分算定にあたってその基礎となる財産とは?
(民法1029、1030条)
遺留分を計算する際に、被相続人が死亡した時点に存在していた
財産のみをその基礎とすると、被相続人が生きているうちに愛人のI子に
財産を贈与してしまえば死亡した時点では相続財産がなくなってしまい、
民法で遺留分が認められた意味が失われてしまいます。
そこで民法は遺留分算定にあたってその基礎となる財産として、
被相続人が相続開始時に有して + 贈与した財産 - 債務(借金)
いた積極財産(プラスの財産)
・「相続開始時に有していた積極財産」には、
遺贈(民法964条)や死因贈与(民554条)された財産を含みます
・「贈与した財産」は、被相続人の死亡前1年以内に生前贈与
された財産のことをいいます。(ただし、贈与者・受増者双方が遺留分権利者
に損害を与えることを知っていた場合は1年以上前のものも含む)
■遺留分減殺請求とは
お待たせしました。いよいよ本題の「遺留分減殺請求」です。
(民法1031条)
これは、遺留分を侵害している相手方に対して、
「私の遺留分を返して下さい」と請求することをいいます。
遺留分権利者が複数いる場合、その中の一人が全員の分を代表して
遺留分減殺請求をすることはできません。
それぞれが自分の分を請求しなければいけないということです。
遺留分減殺請求によって自分の遺留分を保全する際、その対象となる
財産が複数あったり、贈与などがなされた時期が異なっている場合、
どの財産から減殺していくべきかについて法律で定められています。
つまり、たとえ遺留分権利者であっても自分にとって都合のよい財産を
いわば狙い撃ちで返してもらうよう請求することはできない
のです。
【以下は遺留分減殺の際の決まりごとです。】
減殺はまず遺贈(遺言で書かれている財産)からなされること。
それでもまだ遺留分に満たないときは次に生前贈与を減殺すること
(民法1033条)
遺贈が複数ある場合は、遺贈の目的の価額の割合に応じて
減殺すること(民法1034条)
生前贈与が複数ある場合は、後の贈与から
順次前の贈与へと減殺すること。
つまり、相続開始時に近いものから古いものへと
さかのぼっていくということです(民法1035条)
■遺留分減殺請求権の行使にあたって
遺留分減殺請求は受遺者・受贈者に対する意思表示をすればよく、
必ずしも裁判上で請求する必要はありません。
そして、この減殺請求の意思表示がなされれば法律上当然に
減殺の効力を生じ、遺贈又は贈与契約は効力を失います。
ではどのように遺留分減殺請求すればよいのか?
ここで登場するのが、「内容証明郵便」(配達証明付き)です。
断言します。遺留分減殺請求は専門家に依頼して内容証明郵便で
出してもらうべきです。
これは、当事務所が内容証明作成業務を行っているから言っている
のではなく、きちんとした理由があります。
それは、遺留分減殺請求と内容証明郵便の相性がバッチリだからです。
ふざけている訳ではありません。以下でその相性の良さを証明します。
まず、内容証明郵便の特徴を簡単に挙げると、①いつ送ったか
②どのような内容であるのかを公的に証明してもらえる
③相手方に心理的圧力を与えることができる、などがあります。
遺留分減殺請求には時効が定められています。
詳細は後ほど述べますが、一定の期間が過ぎてしまうと
遺留分減殺請求権自体が消滅してしまいます。
遺留分減殺請求をしたのがこの期間内か否かによって財産を取り戻せる
かどうかという大きな違いが出てくるわけですから、まさに請求した時期
をはっきりさせておく必要があるということです。
この点で、①いつ送ったかを公的に証明してもらえる
という内容証明郵便の特徴を生かすことができます。
また、いうまでもなく遺留分減殺請求の当事者の利害は対立しています。
前述の例でいえば、全財産を受け取ろうとする愛人のI子さんと
遺留分を取り戻そうとする妻・子供の関係です。
このような状況において中途半端な内容で遺留分減殺請求をすれば
I子さんに足元をすくわれかねません。
そのためには相手に有無を言わせない内容できっちりと証拠として残る
ように請求しなければいけません。
この点で、②どのような内容かを公的に証明してもらえる
という内容証明郵便の特徴を生かすことができます。
また、遺留分減殺請求をしたいと考えている方が、遺留分を取り戻したい
という気持ちが強すぎて脅迫的な言動に出てしまうと、遺留分の取り戻し
どころか逆に損害賠償を請求されてしまいます。
こんな時こそ、大人のケンカとしての「内容証明郵便」
「ポイントを押さえた遺留分減殺請求」「専門家の名前」という
3点セットで自己の権利を主張すべきなのです。
この点で、③相手方に心理的圧力を与える
という内容証明郵便の特徴を生かすことができます。
■遺留分減殺請求権の期間制限について(民法1042条)
前述したように遺留分減殺請求権には時効期間が存在します。
具体的には、遺留分権利者が、①相続の開始および
②減殺すべき贈与または遺贈があったことを
知ったときから1年以内となります。
また、①,②の存在を知らなかったとしても、相続開始の時から
10年経過すると権利が消滅します
ここで一点述べておきたいのは、上記の期間内に具体的な遺留分の
計算をしていくら分のこの財産を返還して下さいという請求までする
必要はないということです。
すなわち、いわゆる手付のような感じで、私は遺留分減殺請求をします
からという意思を相手方に表示すれば、具体的な返還請求は
この期間後に行ってもよいということです。
■遺留分の放棄(民法1043条)
ここまで遺留分減殺請求による財産の取り戻しについて述べて
きましたが、遺留分も権利である以上、これを放棄することが可能です。
例えば、ある夫が妻にすべての財産を残したいと考え、
その旨の遺言を作成したとします。
しかし、このままでは子供の遺留分を侵害することとなり、子供から
遺留分減殺請求される可能性があります。
ここでその子供が経済的に自立し、父親の財産をとくに当てにしていない
というような事情があれば、
自分の遺留分をあらかじめ放棄しておけば争いにならずに済みます。
この遺留分の放棄は相続の開始前に、
家庭裁判所に「遺留分放棄許可審判申立書」を提出し、
その許可を得なければいけません。
なお、相続開始後の放棄は家庭裁判所の許可がなくても認められます。
時効にかかる前に、内容証明郵便で遺留分減殺請求しましょう。
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